茜色の空をゆく中秋名月


千曲市日本遺産推進協議会とさらしなルネサンスは中秋の10月6日、天文アプリが示すシミュレーション通りに中秋の名月が山の峯に現れるかどうか確かめるイベントを「姨捨の棚田」の一角にある姪石苑(めいしえん)で行いました。
姿を見せ始める予測時刻の午後5時15分ごろは、うっすらと細い雲がなびき、月の出は見られませんでしたが、同20分ごろ、その細い薄雲の中に、大きな円い輪郭があるのに気づきました。日の入り直後でまだ太陽の光りが十分に空にある時間帯だっただめでしょう、それは餅のような白さで、月です。とても大きく見えます。その場所は、確かに天文アプリが予測した鏡台山の南峯の辺りから上る軌道上(約60度の角度で右上に上昇)です。
月には薄雲がかかっています。うつろう薄雲と上る月のコラボレーションが始まり、刻々と部分的に姿を見せたり、薄れたり、色を変えたり、全身を見せたり…。日没から時間がたつにつれて空の色も変わり、それに伴ってこの日は薄雲が茜(あかね)色を示し始めました。茜色の空を旅する中秋の名月を初めて体験しました。掲載した写真は、姪石苑から見た午後5時26分の光景です。
女性を中心とした参加者はみなさん感激し、一斉にスマホを向けていました。「見えるようには映らないのが残念」という女性の気持ちがよく分かります。人間の目は見たいものを大きく見ようとします。「でも、見えた大きさが本当の大きさなのよね」と続けておっしゃいました。
姪石苑での観月の前には、千曲市日本遺産センターで天文アプリの「ステラナビゲーター12」の画面をパソコンからスクリーンに映し出し、どのように操作すれば、事前に中秋の名月の現れる山の峯と時刻が分かるかを解説しました。このアプリを使うと、過去未來、世界のどこの場所でも中秋の名月の現われる様子を映し出すことができます。松尾芭蕉が「更科紀行」の旅で見た月の出、さらに北極で見られる中秋の名月もご覧いただきました。現代の「月の都」さらしな姨捨で最も有名な「鏡台山の凹んだ峯」から上がる中秋の名月は、どこでなら見られるのかについても、この天文アプリなどを使えば分かることをお伝えしました。(さらしなルネサンス・大谷善邦)