地域の魅力を発信する
川西地区振興連絡協議会 山口盛男さん
「地域の素晴らしさを発信・発見する」この思いを胸に千曲市川西地区でまちづくり活動を行う団体が、川西地区振興連絡協議会です。平成19年の立ち上げ以来、ウォーキングルートの整備や遊歩道マップの作成、各種勉強会の実施などに精力的に取り組んできました。
山口盛男さんは、そんな川西地区振興連絡協議会の主導的立場で長年務めていまいりました。このサイトで取り上げる活動の多くは文化的活動など同じ趣味を持つ人たちによって立ち上げられた団体ですが、山口さんたちの活動は川西地区という定まった地域の活性化を目的としています。
本インタビューでは、地域をベースに活動するからこそ出来ることや難しさ、日本遺産事業への思いなどを伺いました。
月の都へのおもいを語る
その時に、地域全体の交流・意思疎通に欠けていたことから解決する動きが無かったことから、話し合いの場として立ち上げたのが川西地区振興連絡協議会でした。地域のエゴで解決できない限界を知らされ、広域的に物事を考えることで地域全体の課題解決を図る取り組みとしました。これは日本遺産事業を進める際にも重要な観点だと思います。
私がまちづくり活動に積極的に関わるようになったのは62歳を迎えてからです。「待っていました」と言わんばかりに区長の役割が回ってきたのです(笑)。最初、川西地区3地区(稲荷山、桑原、八幡)の駐在所を1箇所に統合するという案件を抱え、その問題をどうやってよりよい方向性で落ち着けるかを議論することとなりました。
駐在所の統合という明確な目的があったからこそ強いつながりができ、川西地区振興連絡協議会は駐在所の統合も無事に解決し、その後も団体としての活動は継続していくことになりました。
平成19年の立ち上げ時に掲げた目標は「行政又は誰かがやるだろうではなく自分たちから行動を起こそう」でした。駐在所の統合がひと段落した後は、この目標に向かって住民協働でできるさまざまな活動を始めました。
具体的には、ウォーキングイベントの実施、講演会の開催、古道の開鑿整備、指導標・案内板の設置などです。現在、私たちの活動はWebサイトでご覧いただけますが、これも活動の一環として始めました。
なぜウォーキングや古道の整備を活動の軸にしたかというと、川西地区を構成する稲荷山、桑原、八幡には善光寺街道と東山道が通っており、3地域に関りがある事からです。この歴史的なコンテンツを活かさない手は無いと考え、県の補助金なども活用しながら協働で少しずつ整備を進めてきました。
川西地区には約2,500世帯が住んでいます。「住民のためになる活動を行うのに、なぜ遊歩道の整備を?」と思う方もいるかもしれませんが、私は立ち上げ当初から、住民の結束を強めることと同時に、域外から来た人をおもてなしすることがこの地域にとって重要だと考えていました。
おもてなしをするためには、遊歩道を整備したり、案内板を設置したり、ガイドするために勉強をしたり、イベントを開催したりする必要があります。その過程で地域の人たちが自分たちの地区の歴史や文化を学び知識を身につけ、今まで以上に愛着が湧くことを期待しました。つまり域外の人をおもてなしすることや情報を発信することは、結果的にこの地区に住む人のためになるのです。
千曲市が日本遺産に認定されたことで、今後はこれまで以上に地域外の人に魅力を発信し、同時に地域の人が千曲市のことを知ることが求められます。長年、千曲市の地域振興に携わって来た山口さんにとって、日本遺産認定はどのように映っているのでしょうか。
私たちが活動している川西地区は、千曲市の観光の拠点である戸倉上山田温泉からは離れています。だからこそ感じるのは、千曲市の観光コンテンツは温泉だけではないということです。
例えば街道、自然、棚田、遊歩道、蝶など、この地には自然を活かした魅力がたくさんあります。最近では、ワーケーションを通して千曲市を訪れる人も増えていますが、温泉をメインに考えずに自然をメインにした癒しの体験を提供していけたら、多くの人に来てもらえると思います。
ただ、これまで当たり前だった考え方や価値観はなかなか変わりません。しかし私は、スムーズに進まないからこそまちづくりはおもしろいと思っています。日本遺産がキッカケとなり、少しずつ変えていけたらいいんじゃないでしょうか。
「スムーズに進まないからこそおもしろい」という山口さんの言葉には、趣味や共通の志向性ではなく数千世帯が所属する地区のまちづくりをしてきたからこその重みと説得力がありました。
これまでの経験も考え方も異なる人たちが、同じ地域に住んでいるということだけでは繋がらない。しかし住んでいる人たちはみんな、この地域がもっとよくなったらいいなと思っている。このことは、川西地区でも千曲市でも同じではないでしょうか。
千曲市川西地区振興連絡協議会が運営するWebサイト「ちくま発見伝」は、下記のURLからご覧いただけます。地元密着型で川西地域を中心に魅力を発信していますので、ぜひご覧ください。https://sarashina-tanken.com