月の都は自治体の枠をこえる 坂城町の村上小学校で俳句の出前授業
さらしなルネサンスは7日、千曲市の東隣、坂城町の村上小学校で、松尾芭蕉が立ち寄ったとされる同町網掛区の十六夜観月殿に刻まれた松尾芭蕉の俳句を題材に、俳句の出前授業(5年生と6年生それぞれのクラスで)を行いました。同観月殿にある芭蕉の俳句は「十六夜もまださらしなの郡(こおり)かな」で、この句はさらしなの月を見るためにだけに旅をして芭蕉がまとめた「更科紀行」の中に載っているものです。千曲市八幡の長楽寺あたりで名月を眺めた中秋十五夜の翌日、江戸に向かう芭蕉が同観月殿あたりで月見をして詠んだものとされています。
出前授業を行ったのは元更級小学校校長の児玉淳子さん(さらしなルネサンス理事)。児玉さんは「更科紀行」をまんがで紹介する漫画家・絵本作家のすずき大和さんの本の場面をパワーポイントで映し出し、村上小学校の近くにも芭蕉が立ち寄ったことを伝えます。芭蕉の名前は知っていても地元に来て俳句を作ったことを知らない子が大半で、子どもたちはびっくりしていました。
今回の出前授業には、傷んでいた十六夜観月殿の修復(2020年)にも携わった元教員で網掛区区長の小宮山峰男さんにも協力をお願いしました。観月殿の歴史をはじめ、現在も観月殿で俳句大会が行われていることなどを紹介してもらいました。小宮山さんが強調したことの一つは、「埴科郡坂城町」という言い方でなじんでいる地元を、芭蕉がなぜ、さらしなの郡(更級郡)と詠んだのかということでした。網掛区を含む現在の千曲川西側の一帯はかつて姨捨山(冠着山)のある更級郡で、更級郡の有名な景色を言う「更科八景」にも、十六夜観月殿が入っていることも指摘しました。「月の都」は歴史的には自治体の枠を越えており、地元の子どもたちにもっと俳句に親しんでもらいたいと小宮山さんはお考えのようでした(小宮山さんをはじめ十六夜観月殿の修復に携わった方々が今年度、本会の会員になっています)。
俳聖として知られる芭蕉が地元に来たことを知ってもらった後は、子どもたちの実際の俳句づくり。575のリズムになじんでいない子もいます。児玉さんは、この夏の体験で「心に残った」ことなどを短い言葉で配布した用紙に書き出してもらい、その言葉を、別に資料として渡した季語一覧の用紙の中から季語を選び、指を折って575のリズムにしてごらんなどとアドバイスしました。児玉さんは14日にもう1時間使い、この日に子どもたちが作りかけた俳句を仕上げる出前授業を行う予定です。(大谷善邦)