読み応えのある俳句大会受賞作


千曲市日本遺産センター(同市八幡姨捨)に、読み応えのある俳句が展示されています。千曲市で長く続く「信州さらしなおばすて観月祭」で開催されてきた全国俳句大会の受賞作(令和6年)で、当地の歴史文化や地形、景観を見直させる句がありました。
中でも見事と思ったのは、千曲市長賞の次の句です。
母の日の母に母居て子も母に 茨城県土浦市 野口英二
わたしはすぐには句意が理解できず、展示を担当した同センタースタッフに尋ねたところ、スタッフはすぐに解説してくれました。4世代の母親がいることを詠んだということが分かりました。
母の日に大勢の親族が集まり、詠み手の野口英二さんは60歳ぐらいなのでしょう。そこを起点にすると、野口さんは自分の娘を連れて自分の母親を祝おうとしたのでしょう。その祝いの場には自分の母親の母、つまり、100歳に近いおばあさんが元気で過ごしており、連れて行った20代の娘も子どもがいるお母さんになっていることに驚いたのです。そして驚いたその自分の隣には、自分の妻。命を誕生させる母が、同じ場所に同時に4人も一緒にいることに感動しているのです。
信州千曲観光局賞の次の句もなかなかです。
望月を洗ひつづけて千曲川 大阪府枚方市 春名勲
夜空に上っていく中秋の名月の光りを照り返すのが千曲川。川面にはどの角度からも月の光りが届くので、中秋の名月と千曲川は夜通し、不即不離の関係です。千曲川を流れる水はずっと中秋の名月を磨き続けます。それだからこそ中秋の名月はずっと輝きを続け、特別の月であることを歌っています。
千曲川は佐久地方を始原に長野県を横断し、越後に流れ出ていきます。そんな長い距離と夜間の長い時間を感じさせる歌は、千曲市から遠いところにある大阪に住んでいる人だからこそ想像することができたかもしれないと思いました。
全国から作品を募集する俳句大会はいろいろな地にありますが、「さらしなおばすて」という場所がらは、現代を考えさせる格好の句作のモチーフになるのではないかと感じました。
(さらしなルネサンス・大谷善邦)


