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蔵のまち、稲荷山

千曲市稲荷山は江戸時代後期の善光寺地震(1847年)で壊滅的な被害を受けました。その後に復興した特徴ある町屋や商家の建物は現在も点在し、平成26年(2014)12月「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されました。日本遺産「月の都千曲」 の文化財構成の一つにもなっています。指定10年目の今の建物(主に荒町・中町)から、改めて建造物の伝統的特徴をまとめました。

                         

松葉屋 (荒町)

明10年(1877)頃の建物で昭44まで料亭でした。主屋の西側には土蔵が連なり、耐火構造全てを取り入れつつ景観と経済力を誇示した建物です

松林家
倉石家

松林家(荒町):瓦葺2階建て、軒下には土を塗り、袖うだつが設けられています。

倉石家(荒町):弘化4年直後、うだつを備えた耐震耐火建築の稲荷山第1号。稲荷山郵便局の発祥地です。

稲荷山の町屋は間口が広いばかりでなく、奥行も深いのに驚きます。急勾配の屋根は建物を大きく見せ、広い道幅と相まって個々の建物にボリューム感を与え、当時の繁栄を今に伝えています。裏通りには土蔵が並びます。

山丹 見世蔵と主屋
主屋裏(東側)の土蔵

山丹 (中町)

明治、大正にかけて県下屈指の呉服商でした。道路に面して母屋と見世蔵があり、裏(東側)には1~8号の土蔵が残っています。土蔵の腰回りは下見板張り施工です。

  • 土蔵造り 木の柱や壁を厚く土で覆い、漆喰で仕上げた防火構造
  • 土戸(つちど) 観音開きの窓を土で厚く塗り重ねた防火戸
  • 折り釘(おりくぎ)  壁の外に備えられたL字型金具、火災時の火消しの足場や梯子掛けに
  • 軒蛇腹(のきじゃばら) 軒下からの火を防ぐため数段の土壁を施した工夫
  • 袖卯建(そでうだつ)  隣家からの延焼防止に建てられた袖壁
防火土戸(観音扉)
土蔵の折り釘
軒蛇腹
軒うだつ
  • 軒蛇腹・袖卯建 防火目的と共に景観や繁栄の証的な役割をも合わせ持っています
  • 細格子、黒漆喰仕上げ
  • 石の土台 亀甲に切った石の石垣と、その上に据えた直方体の切石を土台にした構造
  • なまこ壁 壁に高価な平瓦を張り、継ぎ目を漆喰で覆ったもの。防火を考慮しつつ贅を尽くしたこの構造は、当時の繁栄振りを今に伝えています
  • 軒先瓦 波の跳ねる模様など独自の瓦が見られます
  • 急勾配の屋根 屋根は建物を大きく引き立てる効果を狙って急勾配にしています
細格子、黒漆喰仕上げ
亀甲の石垣と切り石
なまこ壁と折り釘
軒先瓦
  • 鬼瓦

屋号や家紋、鯉の滝登り・しゃちほこ・「水」など独自の彫刻の鬼瓦が揚げられ、当時の各商家の繁栄ぶりを物語っています。

「重伝建」に指定されて10年目の稲荷山は、老朽化が進む中で少しずつ修復され、道路も随分舗装されました。現在は「蔵し館」が修復中で休館となっています。(ボランティアガイド楽知会)

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