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古い街並みを生かしたまちづくり

稲荷山くらしと心を育む会 宮坂勝彦さん

千曲市稲荷山は、江戸時代に善光寺街道の宿場町として千曲川の水運なども利用した「物資の集積地」として栄え、商人たちが多く集まる町でした。明治以降は、生糸と絹織物商を中心に賑わいました。
現在でも、土壁と漆喰壁を基調とした色調と佇まいが、田畑や山の緑と溶け合い落ち着いた雰囲気を醸し出す街並みが残っています。

この場所で、地域ににぎわいを与える活動を行うのが稲荷山くらしと心を育む会です。今回は会の立ち上げメンバーである宮坂さんにお話を伺いました。

月の都へのおもいを語る

稲荷山で生まれた宮坂さんは、大学進学を機に上京し20代中頃に長野県に戻ってきました。
本の出版や編集の仕事をする傍ら、縁あって長野市戸隠や長野市松代のまちづくりに関わるようになります。さまざまな地域で長年、まちづくりに関わってきた宮坂さんですが、当初、地元である稲荷山のまちづくりに関わることには抵抗感があったと言います。

戸隠や松代など他の地域でまちづくりに関わる一方で、地元である稲荷山のまちづくりには、なかなか一歩を踏み出せないでいました。
地元のまちづくりは相当大変であるということを、距離が近いからこそ知っていたのです。他の地域ではわからない裏の裏まで知っているからこそ、関わるのはなぁ…という思いがありました。

稲荷山の蔵の街並み

しかしその後、宮坂さんは仲間と共に稲荷山暮らしと心を育む会を設立し、稲荷山でのまちづくり活動をスタートすることになります。そのときに宮坂さんが大切にしていたのは「稲荷山宿を重要伝統的建造物群保存地区にしよう」という目的に焦点をあてて、地域の人や仲間と連携することでした。

地元であるからこその難しい人付き合いは一旦脇に置き、まずはみんなが共鳴し目指すことのできるゴールに向かって走る。これを体現していくことは難しかったと語りますが、外への情報発信や勉強会などこれまで培った経験を活かしさまざまな取り組みを実施しました。

宮坂さんたちの頑張りもあり、2014年に稲荷山宿は全国で109地区目の重要伝統的建造物群保存地区に登録されます。その後は登録された稲荷山宿をどう活用していくかに主眼を置き、にぎわい創出のための行政との協働や勉強会、冊子やWebサイトによるPRなどを今日まで行い続けています。

これまでに宮坂さんたちが発行してきた稲荷山の魅力を発信する冊子の数々

稲荷山の街なみは日本遺産である月の都千曲の構成文化財群のひとつです。稲荷山を訪れ際の楽しみ方を、宮坂さんに教えていただきました。

ぜひ蔵の街ならではの風情を楽しんでもらえたらと思います。
町を歩いていると、多くの立派な建物が今日まで残っていることが不思議に思えてくるかもしれません。歴史的には、大火後に建てられたことで土蔵造りになっていると言えますが、“なぜ稲荷山では蔵の街並みが残ったんだろう?”そんな風に疑問をもち謎解きをしていくように街を歩くのも良いと思います。

インタビューの数日前に体験したことを基に、ちょっとマニアックな楽しみ方も教えていただきました。

先日、稲荷山の勉強会の仲間と共に稲荷山の川や水路を巡りました。
次回の勉強会では格子小路をテーマに街を歩く巡る予定です。このように街の中の何かに注目して巡ってみることで、ただ街を歩くのとは違う楽しみ方ができると思います。

最後に、今後の稲荷山におけるまちづくり活動の展望についてお聞きしました。

稲荷山宿は重要伝統的建造物群保存地区に登録されましたが、そのことで観光に振り切るのは違うなと思っています。
まずはそこに住む人々にとって静かで暮らしやすい街をつくる。その結果として観光につながればいいなと思っています。ただ現状は、人、モノ、資源、全てにおいてまだ稲荷山にはその先の観光へとつながる土台が整っていません。その土台を今後の活動の中でつくっていけたらと思っています。

 

稲荷山暮らしと心を育む会では、Webサイト上で観光案内・会員募集・講座イベント情報などを発信しています。興味関心のある方は、ぜひご覧ください。

 

稲荷山暮らしと心を育む会 Webサイト http://inariyama.net