さらしなに魅せられて
さらしなルネサンス 大谷善邦さん
日本遺産に選ばれた千曲市には、さまざまな地名が存在します。
さらしなルネサンスは、「さらしな(更級・更科)」の地名を広めるために、会長の大谷善邦さんがさまざまな方に声をかけて2014年に設立した団体です。
なぜ、さらしなの地名を広めたいと思ったのか、日本遺産に選出された千曲市の観光を楽しむためにはどんな視点で巡るのがよいのか、今後どのような取り組みをしていきたいと考えているのか。
大谷さんの思いを伺いました。
月の都へのおもいを語る
大谷さんが「さらしな」の地名に興味を持ったきっかけを教えてください。
私は生まれが冠着山の麓で、旧更級村の入り口にあたります。
小学校の頃は特に地名にも地域の歴史にも興味はありませんでしたが、中学に入り国語か歴史の授業で『更級日記』という日記文学が平安時代に書かれたことを知りました。そのとき“自分が住んでいる場所の名前が、教科書に出てきた!” と驚き不思議に思いました。
早速、先生や周りの大人に更級の意味や由来を聞いてまわったのですが、誰も答えを持っていませんでした。これがさらしなに興味をもった原体験です。
さらしなを訪れたことが無くても、大谷さんのように国語の教科書で見たという人は多いかもしれませんね。
大谷さんは、長年この地域を離れて働かれていましたが、子どものころ抱いたさらしなの謎への好奇心がさらに高まり、さらしなルネサンスを立ち上げるまでにはどのような経緯があったのでしょうか。
私は新聞記者ですが、2000年に介護保険制度がスタートし介護の社会化が話題になりました。そのときに“そういえば故郷の冠着山は姨捨山と呼ばれている。なぜなのか”と問題意識を持ち調べ始めました。1000年以上前から存在するさらしなという地名と、付随する歴史や文化は調べれば調べるほどおもしろく引き込まれました。
調べていくうちに「さらしな」という地名が「月の都」の称号を授かるほど都の人たちの大きなあこがれだったことが分かってきました。これをもっと多くの人に伝えたいと思い、『さらしなへの旅』という冊子の発行を始めました。『さらしなへの旅』は今日までに約300号発行しています。
このような取り組みを行う中、2003年に平成の大合併で千曲市が誕生しました。千曲市が誕生したことで、“さらしなという地名を活かし広めていきたい”という思いがより強くなり、さまざまな人に声をかけ2014年にさらしなルネサンスを立ち上げたという経緯です。
さらしなの謎への好奇心と、調べた歴史を多くの人に伝えたいという熱意がエンジンとなってさまざまな活動を展開してきたんですね。千曲市は月の都として日本遺産に認定されましたが、最後に大谷さんおすすめの千曲市観光の方法や、地域の楽しみ方を教えてください。
私は観光する際には切り口が大切だと考えています。姨捨の物語の背景、さらしなという地名に人々が憧れた理由、なぜこの地が月の都といわれるのかなどなど。地名や歴史という切り口から観光することで、より深くこの地域の魅力を知ってもらえるのではないでしょうか。
日本遺産・月の都は、そういう観光を皆さんに楽しんでもらえる良いきっかけになると思います。
さらしなという地名をキッカケに地域の魅力を深堀り・再発見し情報を広める取り組みを行う大谷さん。
最後に「日本遺産となったこの地の歴史や文化を、旅前に知るためにおすすめのサイトや本はありますか」と聞いたところ、下記のページと資料をおすすめしてくださいました。
知ると見える世界は変わります。ぜひこれらの資料を読んで学んで千曲市を訪れてみてください。
さらしな堂アネックス https://www.sarashinado.com/
さらしなルネサンス http://sarashina-r.com/
さらしなの里 ガイド冊子 http://sarashina-r.com/booklet/ (ダウンロード可)